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インタビュー

品質管理や加工技術などの国内食品産業の対応力は、世界に誇れます。

西藤 久三氏


財団法人食品産業センター/理事長

---- 昨秋起きた世界同時の金融危機の影響は、国内景気にも確実に現れ始めました。比較的に景気動向の影響を受けにくいとされる食品産業ですが。

西藤)ご指摘のように、景気の影響を大きく受けにくいのが食品産業の1つの特徴です。ただし家計調査などみると、心理的な要因が大きいと思いますが、消費支出全体は前年に比べ名目、実質ともにマイナスになっています。食料支出は名目ではプラスですが、実質ではマイナスになっています。金融危機による需要減に加え、エネルギーや資源が投資対象から外れたことで原油や農産物の先物価格は、大幅に下降へと転じていることは周知の通りです。とはいえ、小麦の場合など高騰以前の価格に比べれば、まだ1.5倍程度の高値で推移しており、また実際の輸入価格に反映されるまでにはタイムラグがありますので、すぐにコスト低下に結びつくわけではありません。

---- 昨年も食の安全・安心、に関わる事件・事故が多発しましたが、こうしたことへの対処と食品産業が抱える課題といったものは。

西藤)近年、食品にかかわる色々な事件・事故が起きていますが、これには「安全」と「安心」とを立て分けた慎重な議論や対処が不可欠だと考えます。これまでのウナギや牛肉などの産地偽装の表示事件などは、企業倫理の欠如による不当な行為でありますが、食品としての安全性を脅かす問題ではありませんでした。
 伊藤ハムさんによるウインナーの回収では、使用した工場内井戸水をのシアン化物イオン及び塩化シアンが、水道法で定められた基準値(0.01mg/L)を超えた値(0.02~0.03mg/L)であったことが原因です。しかしながら、シアン化合物がそのまま製品に移ったとしても、たとえば体重60kgの人が、この濃度(0.03mg/L)のウインナー約2300本(同商品390袋、39kg)を一生涯にわたり、毎日食べても健康に対する有 害な影響が現れないと判断される量との報告もあります。
 企業として回収の必要性については賛否があるとしても、安全性といった点では、まず「基準値」ありきではなく、その内容をもう少し冷静に見ていく必要もあるかと思います。一方で、天洋食品の冷凍餃子や冷凍インゲンなど農薬の多量の混入により、健康被害を引き起こしたケースもみられます。
 まさに、こうした食品の安全性を脅かす事件・事故については厳格な対応が望まれます。1つには、企業自身による品質管理の徹底、確認と点検です。2つめは、事件性のあるものには全容の早期解明が不可欠です。冷凍餃子事など、いまだ解決をみないままの事件もあり、消費者の食の安全への不安が拭いきれません。3つめは、冷静な議論をお願いしたいということです。この点では、内閣府に食品安全委員会ができたことなどで、タイムリーに検証結果やそれに基づいたリスク評価などが公表されるようになってきました。先ほど「基準値」の内容をみていく必要性にも触れましたが、穀物の種類により残留農薬の基準値が異なるケースもあります。私は、こうした検証結果などを踏まえつつ、CODEXなどの国際基準との整合を図る時期に来ているとも思います。

---- 将来的な食品需要といったことを考えますと、景気動向もさることながら人口減少や世帯構造の激変など、かつてない問題が横たわっています。その意味で今後、食品産業に求められるイノベーションとその課題とはどのようなものでしょうか。

西藤)いうまでもなく国内の人口減少や、少子高齢化を背景にした社会構造の変化が進んでいます。これらは初めての経験となるもので、食品産業として大いなるイノベーションの時を迎えているといえます。人口は2045年に1億人を割りますが、ゆるやかな当面は減少傾向なのです。社会構造の方はドラスティックに変化が進んでいます。
 すでに1~2人の世帯構成の全体55%を占めており、とくに高齢者の単身世帯が確実に増えつつあります。こうした変化は個食化や簡便性、健康志向といったニーズとして現れており、これにより家庭の食の外部化が急速に進んでいます。食品売り場には調理食品があふれています。将来はほとんどの食品が外部調理され、家庭での調理といったことが稀になることも十分に考えられます。こうした食の外部化が進む中で、品質管理や加工技術、そして消費者への情報提供がより重要になってきます。
 昨今、フードマイレージやカーボンフットプリント表示、食品ロスなど、食品産業でも環境負荷の軽減への取り組みが大きくクローズアップされ、地産地消なども見直されています。とはいえ、こうした考えは、実際のマーケットに即して検証する必要があり、環境負荷についても安全や安心と同様に、消費者への情報提供が求められるでしょう。こうした点でも、食品産業のイノベーションでは、特にパッケージの役割が重要になってくると思います。
 私は、これまで培ってきた経験とともに、また国内食品産業の今経験をしている様々な問題への対応力といったことは今後海外に誇れるものとなると思います。国内のみをみれば、確かに人口の減少などをはじめ、将来的な需要の縮小は否めませんが、むしろアジア全体では大きな需要の伸びが期待されています。日本はその先駆けとして様々な経験をしているのであり、もちろん構造改革の波は覚悟しなければなりませんが、特に品質管理や加工技術といった点では、国内食品産業の対応力は大きな武器になると思います。かつてないイノベーションの時を迎えており、これは国内の食品産業にとって大きなチャンスであると考えています。

【日本の人口推計】各年10月1日現在の人口。総務省統計局『国勢調査報告』による。