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インタビュー

日本のパッケージデザインは世界一

竹原 あき子氏


和光大学 芸術学科/教授

〈略歴〉1964年/千葉大学工学部工業意匠学科卒業。1964年/キャノンカメラ株式会社デザイン課勤務。1968年/フランス政府給費留学生として渡仏。1968年/フランス、国立高等工芸大学。1970年/フランス、パリ環境研究院。1972年/フランス、高等インスチチュート。1973年/武蔵野美術大学、非常勤講師。1975年/和光大学芸術学科、助教授。1984年/同教授、現在に至る。

〈著作〉「立ち止まってデザイン」(1986)、鹿島出版会。「ハイテク時代のデザイン」(1989)、鹿島出版会。「環境先進企業」(1991)、日本経済新聞社。「魅せられてプラスチック」(1994)、光人社。「パリの職人」(2001)、光人社。以上、単著。「現代デザイン事典」(1993~2006)、平凡社。エコマテリアル担当。「眼を磨け」(2002)、平凡社、監修 「日本デザイン史」(2004)、美術出版社、共著。日経デザインに「デザインとはづがたり」、日経流通新聞にパッケージナウコラム連載中。日本デザイン学会、日本基礎デザイン学会会員、バリアフリー推進委員会、通商産業省、委員他

---- 世界同時不況下での景気後退が喧伝されていますが、国内マーケットでは依然モノが溢れています。もちろん消費の冷え込みは現実としても、モノが売れない原因は景気だけによるものではないと思いますが。

竹原)私は例年、年の4分の1ほどをフランスで過ごしていますが、欧州での今回の不況の影響は深刻で、日本はまだまだ恵まれていると思います。その点でも、モノが売れない原因を景気後退に押し付けことはできないかもしれませんね。ご承知のように、日本は世界に先駆けて超高齢社会(65歳以上が人口構成比で20%以上)を迎えています。
 かつて高度経済成長を支えてきた人口構造とは全く異なってきているわけです。いまだ高度経済成長の惰性の内にあって、構造変化といったものをハッキリと認識できていないのではないでしょうか。だからモノは溢れていても、本当に欲しいモノはないという実感を多くの方が抱いているのだと思います。私はかつて病の治療のため、湯河原(神奈川県)の療養所にしばらく滞在した経験があります。そこで療養されていたほとんどが70歳以上でした。
 超・超・超高齢社会の縮図ともいえましょうか(笑)。その時、すぐに気になったのが、何人かの女性が首から小さなハサミをペンダントのように下げていたことです。いうまでもありませんが、生活必需品のほとんど全てが包装されています。特に毎日の食事では、必ず包装を開封し、からになったパッケージを廃棄するという動作をともなうといっても過言ではありません。老人には惣菜や弁当類に添付されている調味料やタレの小袋は開封が難しく、そのため常時ハサミを首から下げていたというわけです。
 私も、小袋に限らず透明な軟包装袋などでは開封口をよく見つけることができず、指の触覚で切り口を探すようにしています。これはほんの一例に過ぎませんが、たとえばこうした補助器具とのセットとしてパッケージを考えるのか、もしくはパッケージ機能として易開封性を付与するのか、2つの方向が考えられます。
 ミネラルウォーターのボトルのキャップのサイズも大きくして開けやすくしてほしいですね。せめて外側だけでも。空になったボトルも収縮するといいですね。廃棄に便利になります。パッケージは流通過程の安全面だけでなく、使用者の安心安全、廃棄への配慮、とまだまだやり残した作業は多いでしょういずれにしても、快適で平凡な暮らしのためには今後求められる商品開発の上でパッケージが大きな役割を担っていることは間違いありません。

---- かつて取材で盲人の方とお話をする機会があり、その時に聞いたパッケージの開封性についての話が今でも忘れられません。それは「毎食時に食べている食品のパッケージが自分で開封できないと生きる自身を失う」というものでした。開封性に対する不満というよりは、むしろ自身を責めるといった内向きの感情に非常に驚かされました。つまり、超高齢社会ではこうした直接的な不満は現れ難いといえます。また大袈裟な言い方とはなりますが、パッケージには人の生きる意欲という生の尊厳にかかわる力を持つとの自覚が必要なのではないでしょうか。

竹原)売れる商品づくりということを力んで考えなくても、そうした目の前の生活者の視点に立った商品づくりをしていくことで、モノは自然に売れていくに違いありません。モノがなくて我慢した時代に戻ることはできませんからね。超高齢社会に突入したということは、身のまわりに65歳以上の老人が結構いるということでしょう。難しいことを考えずとも、積極的に接していけばニーズは自然に見てくるものだと思います。
 まぁ、今の65歳以上はだいぶ若々しいから一見してわからないかもしれませんね(笑)。ただ高齢者ニーズに向けた商品づくりということを言っているのではありません。バリアフリーやユニバーサルデザインという言葉は使い古された感がありますが、そうしたハンデを持つ人たちへの思いやりといった視点から、新しい商品マーケットの創出が期待されると思います。すでに、そうした配慮が感じられる新しいパッケージスタイルの商品も現れ始めており、注目しています。
 このパッケージの開け口が大きく,閉めやすいのも評価したいですね。もちろんパッケージに限ったことではありませんが、日本の製品デザインは世界のトップクラスだと思います。そのことに世界が注目しつつあるのに、日本人が気付いていないのが残念です。その意味において、若い人たちに海外を旅行してもらいたいと思います。たとえば、現在の世界同時不況下の実態経済を肌で感じてもらいたいし、また世界から日本をもう一度見直してもらいたい。私は、大学の授業で20代の学生と日々接していますが、実感として日本の将来に対して楽観的であり、大きな期待を抱いています。ハングリーな精神こそ不足しますが、彼らの正義心、やさしさ、センスの良さ、勤勉さに明るい兆しが見えるからです。

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