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インタビュー

日本人の感性が生み出す独創的な軟包装に期待

市川 徹氏


株式会社細川洋行/常務取締役

〈プロフィール〉1972年に明治大学農学部卒業後、株式会社細川洋行に入社。営業を経て1977年より食品用のパッケージ開発を担当する。1982年にスパウトパウチの草分けであるチアーパックを開発し、現在のゼリー飲料市場の基礎をつくる。1995年にチアーパックで、2001年にソフト・カートリッジでアメリカ・デュポン賞を受賞。他にRE-パウチ、ソフトボトル、コーナーZIP等を開発し、その実績が世界でも認められている。現在、株式会社細川洋行・常務取締役として勤務中。

---- 本誌では、現在を様々な観点から国内包装産業の大きな転換点ととらえています。近代史元年といえる昭和30年代は高度経済成長への突入などを背景に、PEなどのプラスチック材料の包装材への利用や、包装工程の自動化といったことが急速に進み始めました。まさに、現行の国内包装マーケットをカタチづくってきた時代です。一方で、現今の金融危機を越えて今後、確実に本格化するマーケットのグローバル化や、国内での少子高齢社会の現出による需要構造の激変など、いずれもこのままのカタチでは先が見出せない状況にあるのも確かです。

市川)確かに、この50年を経て、小ロット化、安値傾向等山積する課題を前に国内の包装産業は大きな転換点を迎えたとの認識に立たざるをえません。その意味でも、この機に50年の歴史を振り返ってみることは意義あることだと思います。かつて貴誌では、「日本史上最も庶民の生活が革新を遂げたのが昭和30年代」(2009年5月号)と表現されていましたが、その急速な変化を遂げてきた庶民生活のニーズに絶えず応え続けてきたのが、国内の近代包装史といえましょう。なかんずくラミネート技術をベースにした、加工技術や包装システムの向上には目を見張るものがありました。様々なカタチや機能などを生み出し続けてきたこの50年は、軟包装技術の「るつぼ」であったといえます。そこに携わってきた方々は、無我夢中で新しいパッケージを世に送り出したというのが正直な印象ではないでしょうか。その中には、今に残るモノもあれば、消えていったモノも多数ありましたが、結局残ったものには新規性や機能だけで無く、人が親しめる何かがあったのだと思います。例えば果物は既に立派な包装物ですが、自然界に存在するカタチや機能がなければ長く親しまれることはないと思います。もちろん、消えていった中には時期尚早というモノもありますから、この機会にもう一度過去を見直し、整理することも必要かもしれません。私は、これまで培ってきた国内の軟包装技術は、今なお世界に誇れる"匠"としての独自性を有していると思っています。単に技術的なレベルの高さといったことにあるのではなく、日本人が持つ「感性」によるところが大きいと考えています。本格的なグローバル化が進むことを考えると、日本の軟包装は十分にその優位性を発揮できるに違いありません。

---- 貴社が1985年に開発されたスパウト付きパウチ「チアーパック」は、まさに独創的な軟包装のカタチや機能を体現したものの1つだといえます。24年を経て、森永製菓の「ウイダーinゼリー」に代表されるゼリー飲料の"顔"になったといっても過言ではありません。「チアーパック」には依然、新規性が失われていないという感をもっています。老人介護食など需要の拡大が見込まれる新しい分野では利用が進んでおり、「チアーパック」はこれからのパッケージとの期待も高いのではないでしょうか。

市川)過分なご評価に感謝します。「チアーパック」の開発には3~4年かかりました。当時、清涼飲料の容器として軟包装がにわかに脚光を浴びていました。スタンディングパウチにストローを差して飲むスタイルを記憶にとどめる人も、まだ少なくないと思います。「チアーパック」は、そのストローとパウチを一体化したパッケージです。スパウトの形状や密封性などはもちろんですが、軟包装といえど飲料容器である以上、ホールド性にこだわりました。何故ならホールド性は、消費者と合理的な生産に影響するファクターだったからです。カタチや機能などの新規性は当時から高い評価でした。しかしながら、飲料容器としては飲缶やびんやプラスチックボトルとの競合となるわけですから当然、価格や生産性といったことが大きなネックとなりました。結果的には、ご承知のようにゼリー飲料容器としてブレイクしたわけですが、及ばないものの生産の合理化に注力してきた事が重要であったといえます。1989年にはイタリアの企業と初めてのライセンス契約を結びました。現在では5社の海外企業とライセンス契約を結んでおり、主にジュースやソース、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム用途など約30カ国で販売しています。こうした経験から申し上げれば、グローバル化で国内の軟包装の優位性を生かすためには、生産の合理性が非常に重要なファクターとなります。国内では多品種小ロット化が進んでおり、商品のライフサイクルも短化する中で、給袋方式によるインラインでのスパウト取り付けシステムが主流となっていますが、一方世界では、オーソドックスなプリメイド・パウチ供給と一段乗り越えてロール供給方式によるインランスパウト取り付けシステムも登場しています。国内ではスパウトパウチ用途の拡大からレトルト仕様なども開発されてきましたが、欧州ではこのロール供給方式を生かしたアセプティック仕様の開発なども紹介されつつあるようです。

---- 国内では携帯性やごみの減容化といったことから、商品パッケージとして軟包装への関心が非常に高まっています。その点では、設備・ラインの大幅な変更をともなうことなく、パッケージ形態の変更に自由度を持つ軟包装の生産システムは高い合理性を持つようになってきたといえるでしょう。

市川)国内外マーケットといったグローバルな視点に加えて、時代ニーズを捉えた生産の合理性を追求するといった姿勢が大事です。価格や生産性といった点での缶やびん、プラスチックボトルとの競合では、なかなか「チアーパック」の優位性が発揮できなかった。そのため、日の目を見るまでに随分時間がかかりました。しかしながら、環境対応性やスクイズ性等の機能が認められ、軟包装の自由度が社会の要求に合致する時代が訪れたとも考えています。重要なことは、「チアーパック」が自然に近いパッケージであるということです。かつて売れずに壁にぶち当っていた時期に、充填機メーカーの社長さんに「人類には皮袋に水を入れて携帯していた歴史がある。だから、同じコンセプトを持つ『チアーパック』は何時か必ずマーケットに受け入れられるよ」と励まされたことを今も忘れません。軟包装のコンセプトは自然界に存在するものと類似したものが多く有り、そこに日本人としての感性と独自性を加えることで、国内外の新しいニーズに応えていくことができると思います。そして其れらに合理性を付与できれば世界をリードできるものと考えるのが私の持論であります。