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インタビュー

グローバル化での「米」の可能性と日本の強み

保坂幸男氏、山口尹通氏


保坂氏:株式会社サタケ/専務・技術本部副本部長、農学博士

〈略歴〉1969年 東京大学農学部農業工学科卒業。サタケにて研究開発・商品開発担当。


山口氏:水産学博士、国際薬膳師

〈略歴〉1966年 北海道大学大学院水産化学科修士課程終了。2002年 東洋製罐 常務取締役。2003年 日本クラウンコルク 専務取締役。

山口)是非はともかく、国内でもついに政権交代が実現するなど、これまでの予想を遥かに超えた事象が様々な次元で起きています。これは、何か大きな地殻変動によるものであり、まさに国内外を問わず、私たちは歴史的な転換点に立たされていると思います。いうまでもなく国内では、世界に先駆けて超高齢社会が現出するなど、社会構造の変化が劇的に進んでいます。また、現今の金融危機の経験から今後、グローバル化の進行はさらに加速度を増していくに違いありません。その意味で、エネルギーとともに重要な課題となるのが食糧問題でありましょう。国内でも食糧自給率などの点から、「米」の利用がにわかにクローズアップされていますが、今後の「米」利用の可能性についてどのように考えますか。

保坂)歴史的な転換点というとらえ方から、今後の「米」の利用をどう考えるか、というのはおもしろい観点だと思います。米と小麦の生産量は世界ではほぼ同じで、ともに年約6億トンですが、貿易量では小麦が圧倒的に多く、米は国際的にあまり大きくは動いていない状況です。すなわち、米の大生産地域であるアジアでは、昔から米作りが生活そのものであるという面があると思います。その点では、「米」という意識に欧米との大きなギャップがあるのでしょう。ところで先程、歴史的な転換点というお話がありましたが、最近では「東アジア経済圏」という言葉が頻繁に飛び交うようになっており、それが非常に現実味をおびてきているように思います。そうした大きな潮流の中で、確実に日本の米文化の良さがアジアへ普及するとともに、アジアの米文化の良さといったものが日本へも伝わるようになってきており、明治維新以前のように交流が増してくると感じています。

山口)もともと東アジア圏では漢字などの共通する文化を持っており、米を媒介とした食文化の交流の進展は比較的に早いのではないでしょうか。そうした中で米の加工技術などをベースに、炊飯スタイルや調理などにおいても多様化が進んでくるでしょう。すでに国内では食の多様化が急速に進んでおり、そうしたニーズに合わせた米の幅広い用途の開発が注目されています。例えば米粉の利用などが積極的に進められようとしていますね。こうした加工米の動きなどは、将来的には東アジアだけに止まらず、欧米などを含めた米のグローバル化を確実に進める1つの契機となる可能性があると思います。

保坂)食文化ということを考えれば、まずは隣国の中国・台湾や韓国をはじめとした東アジアが早いでしょうね。ですが、同じ東アジアでも、好まれる米の性質には違いがあります。私どもの調査では、韓国や台湾では日本型の米が好まれ、中国の長江以北でも同様の傾向ですが、長江以南になると若干嗜好が異なります。さらに東南アジアまで広げると、タイやインドネシアなどではもちろん好まれる米は異なります。中国の北京に非常に親しい知人がおり、最近、新潟県の最高級の魚沼産(10kg、7200円)の米を送ってあげたところ、そのおいしさに感嘆されていました。日本米ばかりではなく、日本式の炊飯器なども中国で急速に普及しているようです。確かに米粉の動きは今後注視すべきだと思います。農林水産省の保護主義的な政策の中で、パン業界などの市場で米粉が受け入れられるか否かは不透明です。しかしながら、米粉利用のパンにはモチモチ感やしっとり感といった特徴があり、米食文化がしっかりと根を下ろした地域には受け入れられる素地があるかもしれません。

山口)つい最近、貴社は、加圧・マイクロ波加熱技術の採用した新しい包装米飯となるレトルト加工設備を開発したことを発表していましたね。精米機をはじめNTWP無洗米製造装置など、米に係わる多様な技術開発に余念がない。かねてから米の造粒技術にも注力されており、今後の米のグローバル化という観点から、私も非常に関心を持つ一人です。あえて米粉から造粒することでGABA米などの機能や形状、調理用途別といった多様な米が、健康志向などを追い風に市販される可能性もありますね。日本人には、これまで「米粒」の色や形状に対する独自のこだわりがあるようにみられてきました。しかしながら、そうしたこだわりは戦中・戦後の食糧難の時代にできたもので、むしろモチやせんべい(焼き菓子)などに代表されるように、日本人はもともと粉食文化であったといえなくはありません。昨今では健康志向から、五穀米などの雑穀類を好んで食べるようになっており、「米粒」へのこだわりは確実になくなりつつあります。むしろ、米は小麦に比べてもカロリーが低く、GI値(glycemic index)といった点からも関心を集めているようです。

保坂)グローバル化という観点では、米の特長を生かそうとしても市場経済原理の中では価格競争力に大きく影響を受けます。しかし、そうした健康志向や多様化への対応といった付加価値の訴求といった点では価格競争力を持つようになるかもしれません。品質の良いおいしい米の生産は、やはり日本のような山が多いところの方が適しています。登熟期に昼の日照量が十分に確保でき、明け方の十分な低温も確保できる、山の中腹からふもと辺りではおいしい米ができます。そのような特長を生かすとともに、新たな価値を付加した米製品の製造技術の開発に注力することで、単純な価格中心の市場原理に対抗していきたいものだと思います。

加圧加熱工程での殺菌・仕上げ調理の前工程として、加圧・マイクロ波加熱処理を行う。米の浸漬・アルファ化・殺菌が迅速に進みとともに、米粒の表面に硬い層が形成。そのため、レトルト後も米飯の粒がくずれず、ツヤや粒感のあるモッチリとした食感を実現する。毎分30食生産能力の設備で6億8000万円。