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インタビュー

活力に満ちた人材育成で、日本の食品包装業界に貢献

石谷孝佑氏

(いしたにたかすけ)
1976年東京農工大農学部卒、農林省食糧研究所 (現農林水産省食品総合研究所) 入所。'80年、食品流通部食品包装研究室長。'81年、農林水産技術会議事務局研究調査官 (食品担当)。'96年、農業研究センター作物生理品質部長。'99年、国際農林水産業研究センター企画調整部長、2001年、同国際研究総括官。'02〜'05年、日中農業研究開発センター首席顧問 (在北京)、'05年6月より日本食品包装研究協会会長、'10年1月より日本食品包装協会理事長、青果物鮮度保持包装研究会会長、農産物流通技術研究会理事。
編著書に「食品包装便覧」(JPI/1988)、「食品流通技術ハンドブック」(食品流通システム協会/1989)、「機能性・食品包装技術ハンドブック」(サイエンスフォーラム/1989)、「特許にみる青果物鮮度保持技術の開発動向」(流通システム研究センター/1991)、「新版 食品工業総合事典」(光琳/1993)、「食品包装用語辞典」(サイエンスフォーラム/1993)、「最新機能包装実用事典」(フジテクノシステム/1994)、「包装技術便覧」(JPI/1995)、「食包研35年の歩み」(日本食品包装研究協会/1996)、「機能性・食品包装材料の開発と応用」(シーエムシー出版/1998、再版/2005)、『食品加工総覧(全12巻)』(農文協/1999〜2003)、「新版・食品用機能性包装材料の開発と応用」(シーエムシー出版/2006)、『米の事典』(幸書房 /2002、新版/2009)、『食品と乾燥』『食品と熟成』(光琳/2008) など多数。

----- 日本食品包装研究協会が、今年(2010年)1月に一般社団法人として再スタートされたとのこと、誠におめでとうございます。かつて"MA(Modified atmosphere)包装"※の講演を拝聴したことがなぜか印象深く、石谷さんとお会いするたびに思い出します。MA包装は、最近あまり耳にしなくなり残念なのですが、現在はかつてないような需要構造の変化が進む転換点にあり、再び"New MA包装"として再構築すべき包装技術の1つではないかと思います。ましてや、現今の経済危機を例に取るまでもなく、食品だけに止まらずプロダクトマーケットのグローバリゼーションはいよいよ加速しています。こうした国内外での変化の渦中にあって、どうしても負の側面ばかりが目立つことから、国内では内向的なムードになっているようです。
 「世界は、活力に満ちた人達のものである。その強靭な意志は新たな視点で物事を見ることを可能にし、他の人には見えないチャンスを見出す。誰もが、生命力の豊かな人の朗らかな声を喜んで聞くものだ」とは、アメリカの哲学者であるラルフ・ウォルドー・エマーソン(Ralph Waldo Emerson)の言葉です。本誌では今、国内で一番必要なことではないかと思っています。石谷さんの"生命力豊かな朗らかな声"を読者に聞かせていただければと思います。読者の皆さんには、音声まで届かないのは残念ですが...。

石谷) まさにその通りです。本格的なグローバリゼーションと国内の需要構造の激変の中にあって、日本食品包装研究協会が一般社団法人として再スタートしたことは、本当に時宜を得たものだと思っています。平成22年度には創立50周年の大きな節目を迎えることもあり、新しい視点で事業展開や多様な活動を積極的に進めていきたいと考えています。ご承知のように私自身も、これまで食品包装技術の開発などに長くたずさわってきた経験から、日本の食品包装は世界に誇れる存在であると確信しています。
 日本にいるとなかなか実感できませんが、海外、中でも東アジアの国々からは熱い眼差しで見られています。「食の安全・安心の確保」や「包装の環境対応への貢献」「人に優しい包装の改善」といった課題は、国内では聞き慣れた感もありますが、いうまでもなくこれらは世界で共通する食品包装の課題であり、むしろこれまで日本が培ってきた技術やノウハウ、知恵などが、海外で活かされる時代になると思っています。
 こうした転換点に立って、内向的になっている暇などはないと思います。上海万博が始まった中国をはじめ東アジア諸国では、既に"経済危機"から脱して立ち直ってきています。むしろ、目を世界に向けていかなければならない時であり、グローバルな視点からもう一度日本の食品包装を見直す必要があります。「強靭な意志は新たな視点で物事を見ることを可能にし、他の人には見えないチャンスを見出す」とのエマーソンの言葉には全く共感します。

----- 食品だけにとどまりませんが、日本の包装技術やノウハウ、知恵(感性)が世界をリードすると考えている人は決して少なくはありません。しかしながら受注生産を主体としてきた産業としての性なのか、この不況下で内向的な傾向を強めています。本誌には時々、「何とか日本の包装産業のモチベーションを上げて欲しい」との要望などが寄せられます。「活力に満ちた人達」とエマーソンも指摘するように、やはり新しい時代の新しい食品包装の地平を拓くのは"人"ということに尽きると思います。

石谷) その点でも、2007年に"団塊の世代"のリタイアが始まったことを機に、国内では大きく世代交代が始まっています。技術の継承はもとより、ご指摘のような活力に満ちた人材の育成が"要"となっているといえます。このこと1つとっても、これまでの産業構造や社会システムの延長線上では、大きく変化するニーズに充分応えていくことはできないでしょう。ましてや、グローバルな視点での新しい需要創出などは思いもよりません。
 先にも触れましたが、これまで日本で生み出してきた数々の機能性包材などの木目細かな食品包装技術は、グローバルマーケットでも注目されると思っています。近代包装のこの50年間を振り返れば、確かに近年は"新技術"と呼べるものがほとんどない状況であり、そのことがモチベーションの低下にもなっていると思います。しかし、貴誌が「"New MA包装"の再構築」を提案されたように、これまでの経験や日本人としての感性をベースに、むしろ新しい枠組みの中で包装技術の再構築を図ることの方が重要だと思います。
 その意味でも、これからの日本の食品包装の強みとなるのは、やはりハードよりもソフトであることは間違いないと思います。そのソフトの強みを具現化するのはやはり人材であり、シンポジウムやセミナー、研究会や見学会などを通じ、企業の枠や立場を超えた交流から、ともに学び合う場として、人材育成に果たす日本食品包装協会の役割はますます大きくなると考えています。
 また、経験豊かな企業OBさんの力を借りて、新しいテーマで調査活動やコンサルティング事業などを始める予定であり、期待に応えうる新しい日本食品包装協会を目指していきたいと思っています。

----- 現在、NHK大河ドラマで「龍馬伝」が放送されていますが、維新回転の原動力となった人材を多数輩出した私塾的な存在ですね。楽しみにしています。

※MA(Modified Atmosphere)包装:青果物の呼吸量を最小限にして鮮度を保持する包装技術。流通中に低酸素・高二酸化炭素の状態を包装内につくることで青果物の鮮度を保持する。