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インタビュー

目の色が変わるほどの真剣さが動かすモノとは

河野博繁氏

(こうのひろしげ)
1941年11月生まれ。
1965年に学習院大学理学部卒後、
旭電化工業株式会社(現・株式会社ADEKA)
食品開発研究所入社。
初代マーケティング部長などを経て2001年に退職。
現在、HiRO(Hiroshige information & Research office)代表。

----- 本誌は、創刊からはや3年目に入ろうとしています。そろそろ"リーマン・ショック"からも離れようと思っていますが、それは「もう新しい時代が始まった」との過去との一線を画す意であり、これから全責任を担い立つという"決意"の表明でもあります。「時代がどうか」というのではなく、「時代をどう見るのか」「どう動かすのか」という主体者としての自覚と責任が必要です。
 それがなければ、これ以上前に進めないような気がしています。百歳を超えた詩人のまど・みちおさんも「見かけがちょっと悪いとかなんとなく人様にはいいづらいとか、そんなことは問題にしないで、どんどん自分のやりたいことをする。それがいちばん必要なことではないかと思います」(NHK出版生活人新書「百歳日記」)と言っています。河野さんもよく同様のことを言っていますよね。

河野) 百歳を超えた大先輩と比肩していただき誠に光栄です。私もADEKA(当時は旭電化工業)に40年近く席をおかせていただき、色々な経験をさせてもらいました。もちろん、今とはだいぶ時代様相は異なりますが、基本的には企業を支えているのは人であり、そのことは時代とともに変わるものではないと思います。
自分がやりたいことを早く見つけ、いかにそれを企業の力を使って成し遂げるか。誤解を恐れずにいえば、企業といえども人のためにあるもので、自分のやりたいことに企業の力を振り向ける努力が不可欠だと思います。かつて、こんな経験をしたことがあります。それは、将来的に有望な新しい食品の原材料となる植物を海外で探すというもので、見つけた植物の調査・研究を極秘に進めるため、生息する地域一帯を買い取りたいと上司に申し出ました。
 もちろん、上司がすんなり「うん」というわけはなく、「直接、社長にお願いしてみては」との返事でした。仕方なく直接、社長に掛け合ったところが、「誰か、そのことに目の色が変わっている奴はいるのか」と、私の目をじっと見ました。もちろん、私の他には誰もいません。私は「はい。います」と意を決して答えました。すると「幾らかかるのか」とも聞かれずに、「本当だな。じゃ買いなさい」と即断してもらったことがあります。ほとんどハッタリに近かかったと思いますよ。

----- 社長は他に誰もいないことを承知の上で、河野さんの目の色が変わっているのかを確かめたのではないでしょうか。時代背景が違うとはいえ、誰でもが経験できることではありません。「買いなさい」とはいっても、数千万~数億円規模の買い物でしょうからね。人柄も大きく影響していると思いますが、河野さんの交友関係は非常に幅広いですね。

河野) 関心や興味を持つと、たとえ業種が異なれども、相手が誰であろうともお会いして話を聞かないと気が済まないところがあります。その結果として、幅広い交流関係を持つに至ったのだと思います。案外に、異業種の人との出会いが本業に役立つことが多かったのは不思議なことです。相手を選ばず、胸襟を開いて率直にぶつかることが人の信頼を得るカギだと思います。何事も開けば失うこともありますが、それ以上に入ってくるものは大きい。いうまでもなく閉ざしていれば、何も入ってくることはありません。

----- 河野さんとの出会いは、不二ラテックスがゴム臭を抑えたゴム素材(透明性が高く、-40℃~120℃までの広い温度耐性を持つ)を開発し、食品の包装用途に展開するという機会でした。なぜ、そこに河野さんがいたのかは広い交友関係の1つということで、ここでは触れませんが、不思議な縁だと感じています。
 包装材としてのゴム素材の利用には臭いの他にも課題は多くありますが当時、包装用途としての可能性に強い関心を持ちました。今考えれば、"河野マジック"にかけられていたところも大きかったのかもしれません。ただ、ゴム風船が膨らみ切ったところが、食品がムラなく温まり「ちょうどよい食べごろ」だという、電子レンジ調理での包装材としての利用については今でもそれを超えるアイデアに出会うことはありません。

河野) それは、アボガドロの法則によるものです。食品中に含まれる水分子は気体となっても分子量が変わらないため、あらかじめ電子レンジ加温によるパッケージの膨張率は計算できます。ゴム風船が割れるほど膨らむということは、まずありません。ちなみに風船は加温後には急速に縮まり、中身食品と密着しますので、爪楊枝などで突き刺せばスルリと剝けるように取り出せます。究極のイージーオープン機能とはいえませんか。
 私はパッケージの専門ではありませんが、見方や使い方によって多様な顔を持つ非常に面白い素材だと思っています。貴誌が指摘しているように、プロダクトマーケットに限らず、これまでに経験のない大きな転換点に立っていると感じています。現実をそのまま見れば、何をやるにも非常に厳しい環境だといえますが、私はこれ以上のビジネスチャンスはないと思っています。
 もう定年から10年を迎えようとしていますが、やりたいことは沢山ありますし、まだまだ何かをやれると思っています。今すでに仕掛けている新しいこともあり、高杉晋作のようにはなれませんが、「おもしろく こともなき世を おもしく」生きています。パッケージのおもしろさを、本格的に追求するのはこれからではないでしょうか。貴誌に期待しています。