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インタビュー

“挑戦する蔵”に流れる創業からのDNA

髙澤大介氏

菊水酒造株式会社/代表取締役社長
プロフィール◎たかざわだいすけ
1959年10月生まれ。
1982年に東京農業大学卒後、株式会社伊勢丹入社。
1985年6月、菊水酒造株式会社入社。
2001年4月、同社代表取締役就任。

----- 昨秋(2010年)の「KIKUSUI Style Bottle」(720ml、リユース瓶、参考小売価格690円)の発売には驚かされました。本誌(2010年12月号)でも記事として取り上げさせていただきましたが、何といっても、新しい日本酒の飲用提案なのに、ブランド名には"日本酒らしい言葉"が1つも入っていないのですから。
 貴社は「挑戦する蔵」と掲げて、これまでも様々な挑戦に果敢に取り組んでいますね。2000年に実用化された300mlサイズのガラスびんのリユース「Reボトル」などもその1つであり、「KIKUSUI Style Bottle」を生み出すベースになっているように思います。「挑戦する蔵」として、その思いがWebには「壁があるなら、乗り越えればいい。溝があるなら、埋めればいい。できないと思ったら、できるやり方を考えればいい。時代や流行を追いかけるような真似はしない。むしろ、自ら創り出していきたい。反骨、進取、型破り...。それが、菊水。挑戦、試行錯誤、再挑戦...。それが、菊水の歴史。その一端がここあります」と書かれています。
 2011年の年頭所感では、国内の有力企業トップのほとんどが、その景況感を「緩やかな上昇」と推測しています。ただ、本誌が「変わり始めたな」と明らかな変化を感じたのは、「イノベーション」や「技術開発」などをそのキーワードとして挙げたように、単に景気上昇を楽観視するという風ではなく、その上昇カーブを描く自らの意思といったものが感じられたことです。貴社が抱く「自ら創り出していきたい」との同様な意思が、ようやく国内産業全体へ浸透し始めたということではないでしょうか。

髙澤) 過分なご評価に感謝します。ご指摘のように、「KIKUSUI Style Bottle」の発売でも外から見えるほどに、当社の中では"特異な挑戦"といえるものではないかもしれません。当社には、その創業の経緯から「挑戦する蔵」といったDNAが流れ通っていると思っています。初代の蔵主となる髙澤節五郎はわずか16歳で酒製造権を譲られ、酒蔵を借りて造り酒屋を創業(明治5年)しました。
 ですから酒造りと販売、つまり需要を創り出すこととは不可分の関係で、生活を支えるものであったわけです。それだけに、蔵元としては珍しく"マーケット・イン(Market-in)"といった発想が強く、顧客ニーズの変化には必然、敏感にならざるを得なかったのだといえます。父であり、4代目蔵主の髙澤英介もよく、「人と同じ土俵で戦ってはならない、自分の土俵を作れ」と言っていました。
 そうしたDNAが生み出した1つが、アルミ缶入り生酒として定評のある「ふなぐち」(1972年11月)です。日本で初めて生原酒を商品化したもので、開発には3年を要しました。加熱殺菌も割水もしていない搾り立ての生原酒なだけに、かつては蔵でしか飲めなかった門外不出の酒でした。いうまでもなく東洋製罐さんのご協力もあり、生酒用アルミ缶の開発によって商品化できたものです。

----- さすが"マーケット・イン"を志向してきただけに、酒造りとパッケージとが常に絶妙に結びついていますね。「Style Bottle」としたブランド名もうなずけます。通常、蔵元は地域の名士でもあったことから、特定の需要を抱えており、"売る"という発想は必要なかったのでしょうね。やはり、そのことはパッケージの機能や形体などにもよく表れていると思います。
 高度経済成長期の国内プロダクトマーケット全体もよく似ており、造れば売れた時代ですから「高品質なモノをいかに効率よく造るか」という"プロダクトアウト(Product-out)"に重きが置かれてきたわけです。プロダクトマーケットは、人口減少とともに需要構造の変化が急速に進む中でも、未だにそのくびきから逃れられないでいるようです。

髙澤) 清酒業界もまったく同様です。清酒の生産量だけをみても、現今では最盛期3分の1にまで落ち込んでいます。このままでは60万kl規模を切る日もそう遠くないと思っています。とりわけ若年層の清酒離れは顕著で、現今の清酒需要を支えているのは団層(団塊の世代)以上の人たちです。従って将来を見渡せば、リタイアと加齢による酒量の減により総需要の大幅減が迫ってくるのは火をみるより明らかです。
 私は、ヘビーユーザーである団層世代以上の需要を支える取り組みとともに、若年層などの新しい需要を創出する努力が必要だと強く思います。自分自身でも、「これからどうなるのだろうか」と弱気になってしまうことが正直あります。ただご指摘のように、清酒業界の伝統的な体質もあり、売るための努力を尽くしてきたとは思えません。かつて私は、百貨店に勤めた経験があり、清酒の売り場を担当したこともありますが、ブランドのみに寄りかかってしまい、興味を引くような面白さのある清酒売り場が本当に少なくなりました。個々のパッケージを見てもそれぞれは主張しているように見えて、全体を見ると実は同質化してしまっているようにも思えます。逆に言えばそこに機会があります。
 果たして「もう日本酒は売れないのか」と言うと、私は「そうではない」と思っています。誌面で取り上げていただいた「Style Bottle」などもその1つの証左で、その販売を通じて当社の中で、そして売り場で「日本酒は売れる」という感動が広がっています。若年層などの新しい需要の開拓といったことだけではなく、清酒の製造・販売にたずさわる人たちにとっての、1つの動機となればと思っています。
 人口や酒量の減少が進むとはいえ、当社の生産量はまだ総生産量のわずか1%程度に過ぎません。トップメーカーといえども10%に満たないのですから、まだまだ国内での需要拡大の余地はあると思っています。もちろん将来的な展望に立った上で海外進出にも力を入れているところです。「ふなぐち」など海外での評価は高く、逆に新鮮な感覚で教えられることも多いと感じています。

----- グローバリゼーションが急速に進む中で、海外進出に挑まない"井の中の蛙"では困りますが、"内需縮小"といった総論を前に気力が萎えてしまうのもナンセンスです。かの日本マクドナルド・代表取締役社長の原田泳幸氏も、インタビューに「わずか10%程度のシェアしかなく、まだまだ伸び白はある」(主旨)と答えていますからね。今後を楽しみにしています。

加熱殺菌も割水もしていない、搾りたての生原酒「ふなぐち」を国内で初めて商品化。「ふなぐち」は、もろみを清酒と酒粕に分離する酒槽(ふね)の口から流れ出る清酒に由来。