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インタビュー

パッケージ・イノベーションのカギは「情緒」

栗原元久氏

プロフィール◎くりはらもとひさ
王子製紙株式会社 パッケージイノベーションセンター/センター長
1951年生まれ、牡羊座。1975年千葉大学工学部卒業後、本州製紙株式会社パッケージングセンター入社。1996年合併、王子製紙株式会社デザインセンター。2010年4月の組織改正で、パッケージイノベーションセンター、センター長に就任。

----- 「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった」とは、かの川端康成氏の小説「雪国」の有名な冒頭の一節です。まさしく今年(2011年)は、その雪国を思わせる日本列島を縦断した"降雪"に始まりました。ただ、まだ国内景気の長いトンネルを抜けたと言えないのは残念ですが、本誌はもう"気"を取り戻してもよい頃だと思っています。
プロダクトマーケットを取り巻く様々な環境変化への認識はだいぶ進んできたように思いますが、現実は意識変革のように急激な変化を好みません。「建設は死闘」「千里の道も一歩から」で、リスクを覚悟の上で一日も早く新しい行動(action)を起こすことが望まれています。その意味で、貴社が2010年4月の組織改正により「パッケージイノベーションセンター」を開設したことも十分に肯けます。

栗原) パッケージは元来、独自の技術に支えられてきたというよりも、プロダクトマーケットの多様なニーズに合わせた、様々な要素技術の組み合わせといえるものだと思います。ご承知のように、当社は多様な要素技術を抱えており、パッケージだけにフォーカスしても総合パッケージング・サプライヤーであるといえましょう。
 それだけに、かつてない需要構造の変化やそのスピードの速さに対応する上で、多様な要素技術を自在に生かし得る、パッケージイノベーションセンターの役割は大きいと思っています。もちろん、そうした実行性を上げるためには仕組みづくりも大事ですが、それ以上に人材育成が要となると考えています。
 「イノベーション」は、「技術革新」という狭義に用いられることが多いですが、本来は「新機軸」などと訳され、新しい価値の創造により、社会的な大きな変革を引き起こすことを意味しています。王子製紙グループ内部の変革から始まり、変化しゆくプロダクトマーケットの機先を制していくとの思いです。どこまでいってもイノベーションの主体者は人であり、心の働きによるものです。

----- 今年(2011年)1月に起こった北アフリカのチュニジアでの革命は、FacebookやTwitterなどの影響が大きく、"インターネット革命"などと報じられました。しかし、或る革命のリーダーはTVインタビューで「インターネットで革命は起きない」と即答していました。革命を起こすのは人であり、インターネットの情報だけで人は動かない。
 人の心を動かすのは、やはり心であるということでしょう。どこまでいっても、その原理は変わらない。それでは「どうやって人の心を動かすか」ということになります。幸いにもプロダクトといっても、パッケージといっても、デジタルにはけっして置き換えることのできないモノだけに、人の心を動かす媒体となり得るのではないでしょうか。

栗原) パッケージには、「包装」との語訳からも分かるように、大きく"包む"という「機能」と、"装う"という「情緒」の2つの面があると思います。仮に技術革新が限りなく進むと考えると、パッケージの「機能」も限りなくゼロに近づくことになります。例えば物質の瞬間移動が可能になれば、パッケージは不要になります。
 しかしながら、パッケージがなくなれば「情緒」を伝えることはできません。そう考えてみると「情緒」は、他で補うことのできないパッケージの大切な要素であるといえましょう。残念ながら現状はパッケージの情緒面よりも、数値化しやすい「機能」だけに目が向く傾向にあります。それでは、まさしくゼロに向かってひた走ることになり、包装産業の未来は暗いといえます。
 「松茸は千人の股をくぐる」という諺を聞いたことがありますが、見えないものを見る、1001人目となるプロの眼を養うことが求められます。そしてパッケージのプロの眼が捉えたモノを、プロダクトマーケットでの新しい価値創造へと結びつけてゆく努力と挑戦が、当社を含めた包装産業全体の大事な課題だと考えています。
 先ほどは単純に、現状から見えてくる包装産業の未来は暗いとは言いましたが、私の本心はパッケージへの興味・関心はいや増しており、生活を豊かにする「包装」の未来が暗かろうはずがないと楽観視しています。パッケージの魅力を考える時、すぐに思い浮かぶのは日本の伝統を生かしたたまごの藁苞です。機能面だけ見れば、現在に流通できるものではありませんが、パッケージから強い"パワー"すなわち包装への感性を感じます。
 いうまでもなく国内のプロダクトマーケットはゼロサムどころか、マイナス成長の時代です。心が動く"感動"や"驚き"がなくて、どうして新しい価値や需要が生まれるでしょうか。貴誌は、冒頭で「"気"を取り戻してもよい頃」と言われましたが全く同感です。「病は"気"から」と言いますが、「病気」と同様に「景気」の字も半分は"気"が占めています。
 パッケージ・イノベーションは、"感動"の周りに色々なモノをくっ付けていくことで起こるものだと思います。それだけに、パッケージという枠を超えて色々な経験をすることが大切です。特に異なる文化から学ぶことは多く、若い人には海外マーケットや展示会視察などを勧めています。昨年(2010年)のパリ・「アンバラージュ2010」の視察ツアーでは、当社グループの若手メンバーが大変にお世話になりました。ありがとうございました。

----- こちらこそ、同行させていただき大変に勉強になりました。ありがとうございました。グローバリゼーションが本格的に進む中で、伝統文化にみるパッケージの「情緒」といった点では、国内だけでなく海外でも十分に日本らしい優位性を発揮できるものと思います。