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インタビュー

利害や差異を超えた大胆なリーダーシップに期待

山口尹通

山口食品包装技術事務所/所長

プロフィール◉やまぐちかねみち
1966年に北海道大学大学院を卒業。同年、東洋製罐に入社。2002年、常務取締役。2003年、日本クラウンコルク専務取締役。2005年に退任。現在、山口食品包装技術事務所所長(水産学博士、国際薬膳師)。

----- 震災から2カ月が経ちました。"はや"と感じるか。それとも、"ようやく"と感じるか。人により違いはあるかもしれませんが、それが震災に対する心の温度差でなければよいと思っています。まだ余震が続いているとともに、原発問題もいまだ収束の見通しは遠いといえます。また風評などの2次的被害も拡大しているように思います。
 それは、パッケージとて例外ではありません。むしろニッチな産業だけに、かつてない混乱を呈しているようにも思えます。供給不足も一旦は解消したかにも見えますが、まだ非常に不安定な状況にあることは否めません。「危機はかえって深まりつつある」という感さえしています。こうした非常事態に対しては、サプライチェーンや業界全体が運命共同体として一丸となり、協働して事に当らなければならないと思います。

山口) その通りです。ご指摘のように、パッケージだけに限ったことではありませんが、かつてない事態を目の前にし、これまで省みられることのなかった業界や企業の体質といったものが、露わになってきたものと思います。前号(2011年5月)の貴誌でも度々触れていましたが、「いざという時に、真価が現われる」ということでしょう。
 世界が感心する震災での日本人の整然とした対応が、プラス面の現われとすれば、風評などに踊らされて「われ先に」材料や資材を買い溜めるといった姿はマイナス面でしょう。震災直後に店頭で現われた慢性的な品薄状態が、むしろ材料や資材供給で広がりつつあるようです。当然ながらプロダクトの需要が拡大しているわけではなく、いつか冷静さを取り戻してきたところでのリバウンドが心配されます。
 震災後のプロダクトマーケットのニーズといったものを的確に把握し、一定の期間、優先順位を付けた供給コントロールをしていく必要があると思います。もちろん、それぞれの利害に直接かかわることなので、たとえば企業間の話し合いなどで纏まるようなものではありません。やはり、何といっても大胆なリーダーシップが不可欠であることはいうまでもありません。私は、そのことを期待して止みません。

----- 幕末でのたとえが適当かどうかは分りませんが、いわば犬猿の仲であった雄藩同士で結ばれた「薩長同盟」のようなリーダーシップが、果たして企業間でも実現できるのか。それほどまでの強烈な"危機感"を共有できるのか、ということになるでしょう。少なくとも、震災後の状況はそれを生み出す可能性を秘めていると思います。
 単に「国難」という言葉だけに終わらせず今こそ、大胆にして具体的に的を射た行動に移すべきでしょう。本誌は、近代看護の祖フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)の「不平と高慢と我欲に固まった、度し難い人間、そういう人間だけにはなりたくないものです。そして演劇の合唱隊みたいに、2分おきに『進め、進め』と大声で歌いながら一歩も足を進めないような人間にだけはならないようにしようではありませんか」との言葉を想起します。

山口) 震災から2ヵ月を経て支援する方もされる方も、無我夢中で走り抜いてきた息がそろそろ切れる頃ではないでしょうか。避けがたい厳しい現実に向き合い、乗り越えて行かなければなりません。需給サイドとか、支援する方・される方とかいった目線ではなく、ともに新しい未来を見つめながら一丸とならなければ、「国難」など乗り越えられるわけがありません。
 それこそ言葉だけに終わらせてしまいかねません。あえて誤解を恐れずに言えば、それでは震災の意味を失ってしまうことになります。もちろん、被災された方々の気持ちをすべて理解できるとは思いませんが、その隔たりを埋めて"同苦"しようとする思いが、様々な利害や差異を超えた新しき一歩を、ともに踏み出すベースとなるのではないかと思います。

----- まったく同感です。その意味では、まさに変革の最大のチャンスを迎えているといえますね。中途半端な危機感から、企業活動の拠点を"西"に移そうという動きもあるようです。だが、こうした状況下だからこそ、むしろ"東"へと積極果敢に打って出ることが求められていると思います。読者からこんなメールをいただきました。
 それは、厳しい現実を見るにつけて「なお暗い思いになりますが、短絡的なネガティブなシナリオ通りにはならないのが真実だと思っています」というものです。かつて読んだ本にあった、「未来は、自己自身の胸中の一念にこそある。約束されたバラ色の未来などない。そのための努力なくしては、幻想である。また、絶望と暗黒だけの未来もない。それは、戦いを放棄した受動的な人間のあきらめの産物だ」との言葉を思い出します。

山口) 先ほど幕末のたとえを引かれていましたが、そこで「薩長同盟」のような偉業を成し遂げた人たちのほとんどが、20~30代の青年たちだったことを忘れてはならないと思います。幸いにも、私はこれまでレトルトやアセプティック、切り餅の包装など近代包装史における主要な包装開発を手掛けてきました。こうした技術や経験・ノウハウを次世代に今こそ伝え残したいと思っています。
 貴誌にも前号(2011年5月)から連載をスタートするなど、特にこの2年間を焦点として様々なかたちで残し、伝えていく決心です。ともに次世代を担う青年の育成に尽力してまいりましょう。