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インタビュー

震災後に求められるセルフメディケーションのカタチ

久保田 清氏

第一三共株式会社
製薬技術本部 製剤技術研究所
包装研究グループ主任研究員
 
プロフィール◉くぼたきよし
1981年、静岡薬科大学卒業。同年に第一製薬共株式会社 入社し、製剤研究所センターで新製品[固形製剤]の製剤処方研究に従事。1987年、生産技術研究所で新製品の工業化研究に従事。1990年から国際マーケッティング部に所属(海外駐在)。1993年に包装技術研究に従事し、注射剤キットの開発・改良、包装プロセス自動化などを担当。2004年に注射剤技術センター。2007年に第一三共株式会社 製剤技術研究所包装研究Gに所属し、吸入剤の開発等を担当。現在に至る。他に薬剤学会包装分科会の代表世話人や日本包装学会誌の編集委員を務める。

----- 本誌では今年(2011年)7月号で「医薬品包装設計に求められる次なる視点」をテーマとした特集の中で、創包工学研究会にもご協力を得て、幅広く医薬品包装に携わるご担当者に"震災ショック"についてのアンケートを行いました。その結果に有り有りと表われた医薬品包装担当者の問題意識や関心、意欲の高さには非常に驚かされました。
 医薬品は包装分野の中でも一線を画した別世界にあり、質問についても非常に浅い見識となることをあらかじめお許しください。殊に製剤と直接触れる個装については法的にも厳しい制約があり、食品包装のような変化が感じられる分野ではないと認識しています。それだけに、先のアンケート結果からは何かマグマのような、変化への強い欲求といったものが感じられました。
 
久保田) あらためて問われてみると、"震災ショック"というのは非常に面白い視点かもしれません。震災では医薬品とか食品とかいった区別なく、物流や資材供給の問題が大きくクローズアップしました。5ヵ月を経た今でも、まだ完全に回復したとはいえません。こうした問題は今後どこかの時点で総括し、見直しの中で新たな体制を整えていく必要があると思います。
 また医薬品包装といった個々に考えてみると、例えば資材についてはご指摘のような制約はあるにしろ、サステナビリティといった視点から、バイオマス素材などの利用についても考えていく必要はあると思います。ご存知のように、震災では医療機関も多く被災しており、医療スタッフの不足なども問題となりました。
 そうした非常時では、特にセルフメディケーションといったことが必要となります。残念ながら、日本は欧米などに比べてまだまだ遅れています。では、セルフメディケーションに不可欠なものとは何でしょうか。医薬品のユーザビリティであり、それを具現化できるのが包装です。たとえば水のない状況での服用といった場合、注射剤や鼻孔から吸引などの方法が考えられます。それを自ら一人で行うことを考えれば、おのずと包装の重要性も分かるかと思います。
 
----- だいぶ食品の包装に近づいてくる感じですね。近年は、薬事法の改正などにより、日本でもセルフメディケーションを推進する規制緩和などが積極的に進められてきた感があります。事実、スイッチOTC(Over The Counter)などの動きもあり、OTC薬の販売チャンネルは拡大してきました。しかしながら、ご指摘のようなセルフを意識した包装形体の変化となると甚だ疑問です。今回の震災経験がセルフメディケーションへの意識を変える契機となり、ユーザビリティを志向した医薬品包装の開発が本格的に始まることを期待したい。
 
久保田) そうした動きを後押しするような、新しい技術や人材なども見逃せません。たとえば先に触れましたが、薬の投薬方法として経鼻や経肺などは、身体や精神的な負担が少ない。その確実な投与を実現する、包装(デバイス)開発についてCFD(数値流体力学)のシミュレーション技術の活用などが注目されています。
 またセルフメディケーションでは、医薬品の服用遵守率(コンプライアンス)が重要となるのですが、欧米などが50%程度なのに対し、日本では40~50%程度とバラツキがあります。なぜか「薬はできるだけ飲まない方がいい」という独特な考え方が日本にはまだ残っているようです。今後は、こうしたコンプライアンスの向上でも包装機能の利用が注目されています。
 欧米ではICなどを組み込んだ、電子デバイス付きのPTP包装などが試みられています。アドヘレンス包装やモニタリング包装と呼ばれ、服用する時間になるとブザーや人の声で知らせたり、服用した日時を自動的に記録する機能を有したものです。今夏(2011年6月27日~29日)に開催された「インターフェックスジャパン」には、海外のサンプルが幾つか展示されていました。
 
----- かつてスウェーデンの包装関連ベンチャー企業を数十社訪ねたことがありますが、その内の1社(CYPAK)に、同様なICを組み込んだモニタリング包装の技術を紹介されました。もう5年以上前のことです。こうした電子デバイスとの組み合わせが進めば、医薬品包装の開発の幅がグーンと広がりますね。
 
久保田) それは、まさしくセルフメディケーションの世界のような気もしますが、本誌は食品包装の開発でも期待しています。これは、先ほどのスウェーデンのベンチャー企業とも話したことですが、電子レンジでの加温時間や温度設定を、ICを組み込んだ包装で行えないかというものです。もう5年ほど待てば試作品が持ち込まれるかもしれません。(笑)
 逆のケースもなくはありません。たとえば、飲用時に粉末緑茶の入ったキャップを開口させて、ボトルの水と混ぜる仕組みの飲料がありますよね。そうした発想は、医薬品の服用にもそのまま利用できます。混合不可の成分を分離して安定性を確保するため、ダブルバッグとした注射剤などがそれです。
 ですが、こうした包装仕様とすることで、できればユーザビリティの向上につながるような"プラスアルファ"の効果が求められます。
 その1つとして、モリモト医薬が開発したGT(Gel Together)剤によるゼリー製剤などが注目されます。2室もしくは多室分離型のスティックに、それぞれ固形分とゼリーを分包充填し、用時に押し出すことで固形分がゼリーに取り込まれて合剤となるものです。これは、嚥下性の改善や味のマスキング(オブラート効果)、高用量製剤への適用、水分制限のある患者への適応および携帯性など様々な効果が期待されています。