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インタビュー

震災後のパッケージデザインの役割とは

和田 亨氏

株式会社アド・クリエーター
代表取締役社長
 
プロフィール◉わだとおる
1935年9月20日、東京生まれ。今年76歳。1955年3月に都立工芸高校 印刷課卒業。1961年3月に東京芸術大学 美術学部 図案計画科卒業。1961年4月にカルピス食品工業株式会社入社、広告部制作勤務。1965年4月に株式会社アド・クリエーター設立、現在に至る。

----- 本誌の手もとには、創刊の頃にいただいた一書「一倉定の経営心得」(日本経営合理化協会出版局)が常に置いてあります。それは一倉定氏の語録集と言えるものですが、その中に「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である」との非常に面白い言葉があります。「何と理不尽な」とも思われますが、「『社長が知らないうちに起こったこと』でもすべて社長の責任なのだ」という一倉氏の"経営心得"を最も端的に表した1つだと思います。
 もちろん「社長」との表現はけっして限定されたものではなく、広く「リーダー」などに置き換えられるものだと思います。そうした"リーダー心得"があれば、先の大震災にあっても"責任"を担うべき人から、「想定外」などの言葉が出ることはなかったでしょう。しかして6カ月を経た被災地の状況も、だいぶ変わったものになっていたに違いありません。そう思うと残念でなりませんが、むしろ「これから」が非常に大事だと思います。

和田) 同感です。貴誌では「3・11」の震災以降、一貫して"震災ショック"によるプロダクト及びパッケージの変化といったことを訴え続けていますね。私も6カ月を経て、プロダクトマーケットの混乱がだいぶ落ち着いてきた「これから」が大事だと思っています。いよいよ"震災ショック"がプロダクトやパッケージなどに具現化され始めるのではないでしょうか。
 ご承知のように、国内の主要なデザイン団体として、日本パッケージデザイン協会を含めて「D-8」(他に日本インテリアデザイナー協会、日本クラフトデザイン協会、日本グラフィックデザイナー協会、日本サインデザイン協会、日本ジュウリーデザイナー協会、日本ディスプレイデザイン協会)があります。震災直後の直接的な復旧支援といった点では、「D-8」の他の団体に比べて極めて難しい面がありました。
 それは、いうまでもなくパッケージデザインの存在がプロダクトとは不可分の関係にあるからです。その意味では「復旧」というより、むしろ「復興」での役割を担うものだと考えています。その具現化においては、もちろんブランドオーナーとのパートナーシップが不可欠となります。当社でも、これまで40年以上にわたるブランドオーナーとのパートナーシップを生かしたいと思っています。
 
----- 「パッケージデザインでの復旧支援は難しい」とされながらも、和田さんは節電下の店頭でも商品名などが見やすいよう、弱い光でも読みやすいインキ表示のパッケージなどを提案されているとうかがいました。1つの面白い知恵ですね。かつてない震災の経験とはいえ、"歴史"に学ぶことは多いと思っていますし、またそうした視点での検証がようやく始まりました。
 ただ本誌ではそれ以上に、シニア世代の豊富な経験に基づく"知恵"に学ぶことが非常に大事な時期だと思っています。かの吉川英治氏は小説「新・平家物語」で、様々な経験から主人公の阿部麻鳥に「いくら凶年だからといって、智恵をもち、手足もある人間が、むざむざ、餓死を待ってよいものか」と言わせています。
 また近くは、実業家の原三渓(原富太郎)氏が、同様な震災に見舞われて「外形が焼き尽くされたにすぎない。支えてきた人々が存在するではないか。横浜市の本体は市民の精神である」との言葉を残しています。いずれも経験により鍛え上げられた人間の精神が放つ、復旧・復興を推進する強い力を感じさせるものです。

和田) 実業家の佐伯勇氏が、近畿日本鉄道(近鉄)の社長時代に伊勢湾台風で水没した線路を見て「ゲージ統一だ」と叫んだというエピソードは有名です。側近の幹部からは「復旧のめども立たないのにゲージ統一なんて、社長は気が狂ったんちゃいますか?」と言われたといいます。実際、役員全員の反対を押し切って名古屋大阪間の線路ゲージを広軌で統一したことで、日本の鉄道路線広域化の礎を築いたといわれています。
 日本だけに止まらず、確かに歴史をみれば人類は常に、逆境を次なる発展へのバネにしてきたと言えるかもしれませんね。そうした逆境を生かす知恵が「シニア世代にある」というのは、非常にありがたいご指摘です。特に被災地の復興では地域性を生かし、これからのプロダクトマーケットのモデルとなる取り組みを進めていくべきだと考えています。
 新しいプロダクトマーケットのモデルづくりといった点では、まず被災地にアンテナショップを設けてみてもおもしろいと思います。また現地の多様なニーズに柔軟かつ迅速に応えうるミニプラントを設備するなどし、共同購入といった仕組みをつくることも有効ではないでしょうか。それにより、現地の雇用創出にもつながりますから。
 ご指摘のように、知恵を使えば色々なことが考えられます。ただ、これまでとは発想を大きく変えて"共存共栄"をベースに考えなければ、具体的な取り組みは何も進まないと思います。パッケージデザイナーも、震災復興への動きを契機とした新しいプロダクトマーケットのあり方やその仕組みづくりに主体的に関わっていくべきだと思います。また、そうした全体観の上から、再びパッケージデザインを見直すタイミングなのかもしれません。

----- まさに本誌が訴え続けている"震災ショック"を体現するようなお話をありがとうございました。40年以上にわたり時代の変化にも風化しない"本質をつく"パッケージデザインを志向されてきた貴社だけに、その言葉の重みを感じます。