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インタビュー

パッケージの使命は人の役に立つこと

今月はインタビューをお休みし、特別編として「WORLD VIEW」を掲載いたします。

 米国である出来事が話題となった。余命幾ばくもない少年のクリスマスプレゼントに、全米から数百人に及ぶ警官が有休をとって少年の元へ手紙を持参したというものである。もちろん人生最後となるクリスマスプレゼントに、警官からの手紙を望んだのは少年である。
 その小さな願いがこもったメッセージは警官から警官へと次々と伝播し、ついには全米にまで広がったのである。いかにも米国らしいホットなエピソードといえるものだが、全米にまで広がるには或る警官の存在が欠かせない。
 彼は、そのメッセージに接した時の思いをこう語っている。それは「日々の業務に流されて、市民のために働くという警官本来の使命を忘れかけていました。それを思い出させてくれたメッセージを、感謝の思いでできるだけ多くの警官に送りました」というものだ。
 仏典には「譬(たと)へば人のために火をともせば我が前明らかなるがごとし」とある。人を思う心から生まれるものはすばらしい。人の心から生まれて人の心を動かしてゆく、パッケージもかくあってほしいと思う。その意味で、今回は珍しく童話を抜粋して紹介したい。
 知る人も多いかと思うが、アイルランド出身の作家であるオスカー・ワイルド氏の「幸福の王子」(結城浩訳)である。本誌には、あるデザイナーが言った「パッケージの使命を果たさせたい」との言葉を彷彿とさせる。「使命を果たす」とは、いうなれば「最後まで役に立つ」ことである。
     ◇  ◇
 町の上に高く柱がそびえ、その上に幸福の王子の像が立っていました。王子の像は全体を薄い純金で覆われ、 目は2つの輝くサファイアで、王子の剣の束には大きな赤いルビーが光っていました。
 ある晩、その町に小さなツバメが飛んできました。ツバメは高い柱の上の像を見ました。「あそこに泊まることにしよう」と声をあげました。ツバメは幸福の王子の両足のちょうど間に止まりました。そして眠ろうと頭を翼の中に入れようとしたとたん、大きな水の粒がツバメの上に落ちてきました。
 「何て不思議なんだ!」とツバメは大きな声をあげました。「空には雲一つなく、星はとてもくっきりと輝いているというのに、雨が降っているなんて」すると、もう1滴落ちてきました。ツバメは飛び立とうと決心しました。でも、翼を広げるよりも前に3番目の水滴が落ちてきて、ツバメは上を見上げました。
 幸福の王子の両眼は涙で一杯になっていました。そしてその涙は王子の黄金の頬を流れていたのです。王子の顔は月光の中でとても美しく、小さなツバメはかわいそうな気持ちで一杯になりました。「あなたはどなたですか」ツバメは尋ねました。
 「私は幸福の王子だ」「それなら、どうして泣いているんですか」とツバメは尋ねました。「私は幸福に生き、幸福に死んだ。 死んでから、人々は私をこの高い場所に置いた。ここからは町のすべての醜悪なこと、すべての悲惨なことが見える。私の心臓は鉛でできているけれど、泣かずにはいられないのだ」。王子の像は低く調子のよい声で続けました。
 「ずっと向こうの小さな通りに貧しい家がある。窓が1つ開いていて、テーブルについたご婦人が見える。顔はやせこけ、疲れている。彼女の手は荒れ、縫い針で傷ついて赤くなっている。その部屋の隅のベッドでは、幼い息子が病のために横になっている。熱があって、オレンジが食べたいと言っている。母親が与えられるものは川の水だけなので、その子は泣いている。小さなツバメさん。私の剣の束からルビーを取り出して、あの婦人にあげてくれないか。両足がこの台座に固定されているから、私は行けないのだ」。
 「ここはとても寒いですね」とツバメは言いました。 「でも、あなたのところに一晩泊まって、あなたのお使いをいたしましょう」「ありがとう、小さなツバメさん」と王子は言いました。そこでツバメは王子の剣から大きなルビーを取り出すとくちばしに咥え、町の屋根を飛び越えて出かけました。
 ツバメはあの貧しい家にたどり着くと、中をのぞき込みました。男の子はベッドの上で熱のために寝返りをうち、お母さんは疲れ切って眠り込んでおりました。ツバメは中に入ってテーブルの上にあるお母さんの指ぬきの脇に大きなルビーを置きました。それからツバメはそっとベッドのまわりを飛び、翼で男の子の額をあおぎました。
 「とても涼しい」と男の子は言いました。「僕はきっと元気になる」そして心地よい眠りに入っていきました。それからツバメは幸福の王子のところに飛んで戻り、やったことを王子に伝えました。「妙なことに」とツバメは言いました。「こんなに寒いのに、僕は今とても温かい気持ちがするんです」「それは、いいことをしたからだよ」と王子は言いました。
 「もう一晩泊まってくれませんか。ずっと向こう、町の反対側にある屋根裏部屋に若者の姿が見える。彼は劇場の支配人のために芝居を完成させようとしている。けれど、あまりにも寒いのでもう書くことができないのだ。暖炉の中には火の気はなく、空腹のために気を失わんばかりになっている」
 「もう一晩、あなたのところに泊まりましょう」良い心を本当に持っているツバメは言いました。「もう1つルビーを持っていきましょうか」「ああ! もうルビーはないのだよ」王子は言いました。「残っているのは私の両目だけだ。私の両目は珍しいサファイアでできている。私の片目を抜き出して、彼のところまで持っていっておくれ」。
 「私にはできません」。そしてツバメは泣き始めました。王子は言いました。「私が命じたとおりにしておくれ」。そこでツバメは王子の目を取り出して、屋根裏部屋へ飛んでいきました。ツバメは穴を通ってさっと飛び込み、部屋の中に入りました。その若者は両手の中に顔をうずめるようにしておりましたので、鳥の羽ばたきは聞こえませんでした。そして若者が顔を上げると、そこには美しいサファイアが枯れたスミレの上に乗っていたのです。
 「おいとまごいにやってきました」ツバメは声をあげました。王子は言いました。「もう一晩泊まってくれませんか」。「もう冬です」とツバメは答えました。「下のほうに広場がある」と幸福の王子は言いました。「そこに小さなマッチ売りの少女がいる。マッチを溝に落としてしまい、全部駄目になってしまった。 お金を持って帰れなかったら、お父さんが女の子をぶつだろう。あの子は靴も靴下もはいていないし、何も頭にかぶっていない。私の残っている目を取り出して、あの子にやってほしい」。
 「でも、あなたの目を取り出すなんてできません。そんなことをしたら、あなたは何も見えなくなってしまいます」王子は言いました。「私が命じたとおりにしておくれ」。そこでツバメは王子のもう片方の目を取り出して、下へ飛んでいきました。ツバメはマッチ売りの少女のところまでさっと降りて、宝石を手の中に滑り込ませました。「とってもきれいなガラス玉!」その少女は言いました。そして笑いながら走って家に帰りました。
 それからツバメは王子のところに戻りました。「あなたはもう何も見えなくなりました」とツバメは言いました。「だから、ずっとあなたと一緒にいることにします」「いや、小さなツバメさん」とかわいそうな王子は言いました。「あなたは行かなくちゃいけない」。「僕はずっとあなたと一緒にいます」ツバメは言いました。
 「苦しみを受けている人々の話ほど驚くべきことはない。度しがたい悲しみ以上に解きがたい謎はないのだ。小さなツバメさん、町へ行っておくれ。そしてあなたの見たものを私に教えておくれ」。ツバメはその大きな町の上を飛びまわり、暗い路地に入っていき、ものうげに黒い道を眺めている空腹な子供たちの青白い顔を見ました。橋の通りの下で小さな少年が2人、互いに抱き合って横になり、暖め合っていました。
 それからツバメは王子のところへ戻って、見てきたことを話しました。「私の体は純金で覆われている」と王子は言いました。「それを1枚1枚はがして、貧しい人にあげなさい。ツバメは純金を1枚1枚はがしていき、とうとう幸福の王子は完全に輝きを失い、灰色になってしまいました。
 どんどん寒くなってきました。でも、ツバメは王子の元を離れようとはしませんでした。心から王子のことを愛していたからです。とうとう自分は死ぬのだと分りました。ツバメには、王子の肩までもう一度飛びあがるだけの力しか残っていませんでした。「さようなら、愛する王子様」。ツバメはささやくように言いました。「あなたにキスをしてもいいですか」。
 そしてツバメは幸福の王子のくちびるにキスをして、死んで彼の足元に落ちていきました。その瞬間、像の中で何かが砕けたような奇妙な音がしました。それは、鉛の心臓がちょうど2つに割れた音なのでした。ひどく寒い日でしたから。