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インタビュー

変化の可能性を含む多様性の受け入れ

今月はインタビューをお休みし、特別編として「WORLD VIEW」を掲載いたします。

 SNS(Social Networking Service)によって、非常に広範かつ容易に、リアルタイムでのコミュニケーションが取れるようなったことから、WEB上でのアンケートが非常に増えてきたように思う。顧客ニーズを的確に把握し、それをサービス改善に結びつけることはけして悪いことではない。
 だが、浅知恵で巧妙に誘導しようとするアンケート内容もいただけないが、それよりも容易に多発できることによるムダな内容には憤りを感じなくもない。ムダというのは、発信することのみ(情報を集めることのみ)に終始し、質問の意図が伝わらない内容である。
 得てして集める情報(答え)は誰もが大事と考えるわけだが、(まさか数だけではないと思うが)むしろ質問内容が大事であると思う。よい質問はよい答えを引き出すものであり、答えは結果に過ぎず質問は答えを導くプロセスでもある。
 むしろSNSの活用は、顧客から答えを引き出すことではなく、顧客とのコミュニケーションのプロセスに功を発揮するものではなかろうか。善くも悪くもアンケートには発信者の心が表われるものであり、善い(鋭い)質問は明確に発信者の意図を伝え、かつ共感を得るものである。
 善きアンケートに出会えば答えることも楽しく、かつ発信者への信頼や経緯の思いを生むはずである。つまりアンケートは単なる情報収集の手段ではなく、最良のプロモーションでもある。今回は、フランスの家族人類学者・エマニュエル・トッド氏の原著(柴山桂太、中野剛志、藤井聡、堀茂樹、ハジュン・チャン著)の「グローバリズムが世界を滅ぼす」(文春新書)の一部を紹介する。
 少しむずかしいかもしれないが、グローバリゼーションの進展について、トッド氏の「皆さんの判断に委ねるべく述べた」ユニークな視点での問い掛けといえるものである。世界には色々な学問があるものだが、「家族人類学」とは、包装の視点とも通じるものだと思う。
 
 * * *
 
 私が歴史家として、また人類学者として照らし出してみたいのは、グローバリゼーションの状況や問題のうちでも、ずばり経済のこととはいえない事柄です。もっと根深いところにあって、経済上の選択を説明する力、つまり、教育や文化、家族システムの動きに属する事柄です。
 さらに、それらの事柄を通して、いくつかの問いに答えたいと思います。もっとも、いくつかの仮説を示すというのが実際のところです。最終的な結論を述べるわけではありません。
 教育や人類学、家族システム、人口学といった次元で考察するグローバリゼーション、これは私にとって目下の研究テーマなのです。ですから、私が述べるのは、どちらかといえば疑問や新しい問い掛け、当面の斬新的な結論といったものです。まず示したいのは、グローバリゼーションの危機が基本的に先進諸国に特徴的なものだということです。
 思うに、問題の中核は先進国なのです。これから論証するというか、示唆したいのはグローバリゼーションの根本問題が、中国のように広大で影響力のある国のケースまでも含めて、新たな国々が世界の表舞台に登場してきたという側面にあるのではないということです。
 次に、中長期の見通しを示します。実際、私たちは転回点にいると感じています。ネオリベラルのイデオロギーが存在していますが、これには異議が申し立てられています。このイデオロギーではもはや事がうまく運ばず、世界が経済危機から脱出できずにいるからです。
 しかしながら、ここに私が驚き、注目する事実があります。すなわち、ネオリベラリズム批判がどんどん溢れ出てきている一方で、それにもかかわらず各国の政治システムが無能力だというか、方向転換するのがよほどむずかしいのです。
 そのことを踏まえ、より一層の規制や管理への転換が起こるのはどのようにしてかという点を検討するつもりです。その転換が不可避と思えるからです。私の考えでは、自由競争から規制の強化へ向かう時期もあれば、規制の多い状態から自由競争へと移行する時期もあるのです。
 そして今は転換の前夜と思うのです。いつ転換が起きるのかを予測することはできませんが、どこで転換が起きるかということについては考えてみたいと思います。新しい解決策や新しい規制の施策が出てくる可能性のある、カギになる国はどこなのか、ということです。
 これから問いを立てたいと思います。すなわち「事態が一番急速に変わりうるのはどこの国または地域か? イデオロギー上の変化が一番起きやすいのはどこの国または地域か?」。最近まで私は、グローバリゼーションに対する抵抗の場、市場が規制され管理される場は、国家の尊重、管理、個々人の統合といった伝統をもつヨーロッパだと考えていました。
 また、日本に来るようになってから、ヨーロッパと日本はもっと話し合うべきだろうと、日本とヨーロッパは力を合わせて、アメリカの無謀を、あるいはイギリスの無謀を抑えるべきだろうと、そう申してきました。日本では、ヨーロッパにおけると同様、人々が国家を信頼し、集団を信頼しているからです。
 格差の拡大も他の地域よりはマシだからです。ヨーロッパは、経済衝突のゾーンになりました。自由貿易に全く馬鹿げた信頼を置いているゾーンです。現在の世界における奇妙な現象の1つなのです。今日われわれは、大西洋地域に関しても、太平洋地域の関しても、米国相手に自由貿易を交渉している始末です。
 ル・モンド紙で次のような記事を読みました。その社説で、フランスと米国というか、要するにヨーロッパと米国の衝突が取り上げられていました。この記事は不可解なものでした。というのも、条約を求めているのはアメリカであるらしいが、ヨーロッパの側が米国の特定の方策を挙げて、米国が保護主義的な態度をとっていることを責めているからです。
 この記事を読んで感じられたのは、米国は自由貿易論を張り、自由貿易的なことを提案しているにもかかわらず、もはやそういったものを信用していないということです。何しろ、自由貿易の論理は破綻しかけているからです。
 それとは逆に、ヨーロッパは多分にドイツに管理され、フランスもそれに同意しているわけですが、このヨーロッパは、単純すぎる自由貿易論者になっていて、経済思想を持っていません。ヨーロッパの人間として、ヨーロッパには何も期待するべからずというのはいささか辛いのですが、私は自分が現段階で考えていることを言っているわけで、これはこれで誠実な仕事です。
 今後、どういう変化が起こりうるかを見分ける一番簡単な方法は、おそらく次のものでしょう。経済危機への対策において何が起きているのかを見てみましょう。経済危機に対する対策が活発で、貨幣創出という思い切った金融政策を試みているのは、英米の国々であり、日本です。
 私の考えでは、それだけでは不十分です。自由貿易体制では、需要の問題を解決するためには、規制や国際協議を増やさなければなりません。しかし、事実として、経済実験を試行中なのは、米国であり、イギリスであり、日本です。ユーロ圏は旧態依然とした地域です。
 ユーロ圏は、新しい解決策を探していない地域であり、共通通貨のせいで立ち往生しています。その通貨がつくられた時代には、貨幣創出を自由にやり直せることが重要になるとはわかっていなかったのです。そういうわけで、日本はきっとイノベーションが行われる場の1つとなるでしょう。
 日本は日本だけの力では革新を起せません。ともあれ、変化の兆しはあるのです。私が言いたいのはただ単に、今はじっくりと考え始めるときであり、好転するアメリカという仮説を排除してはならないということです。私は1つの原則に従って人生を歩んでいます。こう言ってよければ、ヨーロッパは死です。自ら首を括っている最中です。アメリカは不確定性です。ですから、死と不確定性、この二者択一なら、私は不確定性を選びます。(堀茂樹・宮代康丈訳)

◎エマニュエル・トッド
1951年5月生まれ。フランスの人口学・歴史学・家族人類学者。人口統計による定量化と家族構造に基づく斬新な分析で知られる。現在、フランス国立人口学研究所(INED)に所属。2002年「帝国以後」は世界的なベストセラーとなった。