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〈追悼・編集部〉「雨が降るには理由がある」と。

2010.05.27

 2010年5月26日の夕刻に雨の中、本誌編集アドバイザーを務めていただいた横山理雄さんの通夜が行われた。一夜明けて翌27日、雨は上がり薄日の下での告別式。生前聞いた「天の配剤だな」との、横山さんの声が耳に蘇る。横山理雄さんは天寿を全うして2010年5月22日12時54分に逝去された。享年78歳である。まだ若いといえば若い。
 いうまでもなく横山さんは著名な方であり、多方面での活躍についてはここではおく。本誌は、創刊準備からご協力いただき、陰に陽に励まされ、支えられてここまできた。強く印象に残るのは、創刊の話をした時に「死ぬまで付き合うよ」と言ってくださったことである。もちろん、人生の残り時間を強く意識してのことであろう。
 だが、まさにその言葉通りに逝かれてしまった。ご恩を報じる間がなかったことが残念でならない。ただただ感謝の思いでいっぱいである。仕事を超え、その人格に引かれて、長く横山さんとお付き合いされてきた方はけっして少なくない。或る方が、「信頼できる、業界では数少ない品性の人」と横山さんを評していた。そんな横山さんの周りの方々に比べれば、まだ短いお付き合いだったに違いない。
 しかしながら、そんなわずかな思い出であれ、折々に接してきた横山さんの振る舞いや笑顔、声や言葉のどれも深く心に焼き付いている。もちろん、そのどれもが仕事を超えたものだと思う。よちよち歩きの本誌とも、そんな深い付き合いをしてくださった。かつて、セミナーの講師をお願いした時の、横山さんらしい思い出がある。その講演の1カ月前に体調を壊して入院された。しばらく連絡が取れず心配をしていたが、当日時間ギリギリに会場に現われた。
 トボトボと力ない歩みで、声を掛けても弱々しい返事だった。そこで、横山さんから入院のことを聞かされた。「大丈夫かな」と心配したが、登壇するや否や、それまでとは一転した、堂々とした立ち振る舞いと力のある声を目の当たりにして驚いた。横山さん曰く「退院からこの日に焦点を定めて、心身を整えてきた」と。さすがにプロである。もちろん、人生の上でもふしめ節目に貴重な励ましをいただいた。
 冒頭の「天の配剤だな」との言葉も、思わぬ苦境に立たされた時にポロリといただいたものだ。「そういう歳になったんだよ」「カッパの川流れだな」等々、どれも横山さんの口からポロリと出た、苦境の重圧を一瞬にして打ち払う魔法の音声である。まだまだ山あり谷あり、横山さんにもう励ましがいただけないのは寂しい限りである。だが本誌にも、心にも横山さんは今も生きている。「そういう歳になったんだよ」と言われそうである。
 旅にやんで 夢は枯野を かけめぐる(芭蕉)