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ニュースフラッシュ

〈編集部〉包装女性セミナー「第2回ジェイサロン」

2010.06.28

n_20100707_01.jpg ジェイパックワールド(JPACKWORLD)が主催するパッケージを"キー"とした女性の集い、第2回「ジェイサロン(JSALON)」(学習・座談会)が2010年6月25日、台東区の竹本容器本社で開催された。直前にも男性の方から「なぜ女性だけなのか」とのお叱りの連絡をいただき、「女性だけの集い」という主旨をご理解いただいた。思いもよらぬ反応にも、新しい試みならでは手応えといったものを感じている。
 第2回「ジェイサロン」の講師はコーセーコスメポート商品開発部デザイン室室長の山田博子氏である。「モノからコトへ、経験価値の創造を追求した人生とデザイン」とのタイトル通り、まさに山田氏の波乱万丈な人生を貫いたデザイン制作やデザインへの熱い思いが力強く語られた。「モノのデザインはもう終わった」と、そう言い切る山田氏の言葉に「命懸け」の姿勢が現れている。

○混迷した世相にあってデサインの役割は大きい

 「経験価値とは何か?」「パッケージとの出会い(祖母からのおやつ)」「オイルショックと結婚」「シーズ=ニーズ=商品文化」「企業メッセージ=商品」「机ひとつからのスタート」「"運"を味方につけ」「ある日突然、仕事とストレス」「パッケージの命をまっとうさせたい!!(ゴミとパッケージ)」「デザインの役割」「井の中の蛙、大海を知らず!!(より多くの経験を積み重ねる)」「最近感じること」「全て心が先!! 相手が先!!(世の中は"気"で動く)」等々。
 山田氏が自らの人生経験で学んだことを踏まえた分かりやすい内容で、参加者からも「非常に平易な言葉で分かりやすかった」との声が寄せられた。「振り返れば、幼少時代に祖母からもらったおやつを包んだおひねりがパッケージとの出会いだった」と語る山田氏。おひねりに包まれたおやつが発する匂いやカタチ、手触り、重さなど、中身を想像するのが楽しみだったようだ。「おひねりそのものが、祖母の心であった」という。
 女性として"結婚"は大切なこととして、オイルショックの1970年代に"心の幸せ"をテーマにして開発した「ESPRIQUE(エスプリーク)」を紹介。そのパッケージは、生命力を満々と湛えたイメージから男性のシンボルをデザインしたものだ。山田氏は、何度か「皆さんはどんなことで悩んでいるんですかね」との問いを発し、開催前から参加者の思いに強い関心を寄せていた。その現れであろう、話の途中何度か参加者への質問が飛んだ。「結婚している人?」「自社の企業理念が言えますか?」等々。
 1988年に、現在のコーセーコスメポートを机ひとつからスタートさせた経験を紹介。まさに「命懸け」といえる八面六臂の奮闘ぶりである。そんなことからある日、危うく失明しそうになったことから、障害者への思いに至るようになる。点字表示や色弱に配慮した配色などを、パッケージにも積極的に取り入れるようになったようだ。山田氏はこの経験からより「多くのことが見えるようになった」という。パッケージから「命をまっとうさせてください」という声が聞こえるというが、それもその1つであろうか。そのパッケージの声に応えようと、山田氏はよく「パッケージを使い切りたい」と言っているのが、それが"経験価値の創造"である。
 最近、「木の教え」として宮大工の口伝などが注目されているが、塩野米松氏著書の「木の教え」(ちくま文庫)には「むだなくじょうずに使おうと人々はさまざまに工夫してきました」とか、「材となった木の寿命を使いきることができる」とかいった言葉が随所に出てくる。まさに山田氏の言葉を彷彿とさせるものである。景気の影響はもとより混迷する現代の世相にあって、山田氏は「デザインの役割を大きい」として、デザイン本来の役割に自覚せよと訴える。
 それが、冒頭の「モノのデザインは終わった」ということであろう。むしろ「モノのデザインなんて、本来存在しない」とでも言いたかったのではなかろうか。祖母からもらったおやつに始まり、全ては心が先であり、相手が先であるというのが、山田氏の「命懸け」の人生経験を通じた結論であり、一貫した挑戦であったといえる。第2部の座談会では、山田氏の話を聞いて「スッキリした」「胸の痞えが下りた」というような声が多く聞かれた。中には、涙ぐみながら感想を述べる姿もみられた。
 誰もが、課題や悩みを抱えながら日々がんばっているに違いない。それが、女性ならではの課題や悩みなのかは定かではないが、それだけに山田氏のような先輩たちが周囲にいるということが幸せであると思う。これまで何度か、山田氏に「縁ですね」といわれたが、「ジェイサロン」ではこの"縁"という言葉を大事にしたいと思っている。「ジェイサロン」自体が一つの縁であり、それぞれが"縁"を感じて、その"絆"を深めていってほしいと願うものである。
 「ジェイサロン」には似つかわしくない言葉となるかもしれないが、「男子3日会わざれば刮目して相まみうべし」という慣用句がある。原文は「士別れて3日なれば刮目して相待すべし」(出典「三国志演義」)のようであり、男性の限定したものではなかろう。山田氏は、参加者に「自身の内に、何でもよいからプロとなるモノを3つ持ちなさい」と呼びかけた。何事もすぐにはプロの技を身に付けることは難しいが、日々磨いていく努力は可能である。
 還暦を迎えてなお「まだまだ、やりたいことが沢山ある」という山田氏の3日後を刮目したいと思うのは本誌だけであろうか。「魂を込めるのよ!」との講演での山田氏の言葉が強く胸に残る。