• ニュースフラッシュ
  • ワールドビュー
  • 製品情報
  • 包装関連主要企業
  • 包装未来宣言2020

トップページ > ニュースフラッシュ > 《編集部発》包装の真価-----果して必要か?

ニュースフラッシュ

《編集部発》包装の真価-----果して必要か?

2011.05.20

n_20110520_03.jpg 「国土乱れん時は先ず鬼神乱る」との言葉があるが、「鬼神」とはいわば"心"であり、善きにつけ、悪しきにつけ、変化はまず"心"から始まるということである。本誌では、しばらく誌面で"震災ショック"としてシリーズ化していく予定であるが、その意味もここにある。いうまでもなく東日本大震災では地殻変動だけでなく、津波によって三陸沿岸の風景が大きく変わった。
 それは誰の目にも明らかだが、果たして目には見えないといっても"心"の変化の様はそれほどではないと誰がいえようか。本誌でも度々触れてきたが、この心の変化がプロダクトマーケット、なかんずくパッケージに表われないわけがなく、それはかなりドラスティックに表われることは間違いない。"包装の真価"とは、その変化に耐えうるものであるか、否かが問われるということである。
 供給不足の是正から、全国清涼飲料工業会がリーダーシップを執り、暫時的な処置としてキャップの共有化(色やロゴなし)を図ったことは注目される。こうした動きは、包装材仕様や形体、表示変更など個別単位でも表われている。運命共同体である需要と供給に"ノーサイド"といった意識が芽生え始めていることは確かである。
 キャップはともかく、急場を凌げば果たして元に戻るものか、といえば本誌は「ノー(NO)」である。それは、先にも触れたように「まず意識変化ありき」だからである。たとえば、Pasco(パスコ)は2011年5月1日から一部商品の包装紙量の削減やクロージャー(付属留め具)の廃止を実施している。パスコの変更理由は明らかで、「震災の影響で、原材料の供給が今なお不安定な状態が続いており、特に包装紙の原料への影響が大きく、全国的に包装材料が逼迫している。限られた資源の有効活用、エコロジーの観点も含めて変更する」というものだ。
 とはいえ、震災後の一時的な対応とはうたっていない。これまでも包装形体が変わることで、売上に表われるマイナス影響について何度となく議論があった。特にパンでは定番のクロージャーや漬物、ソーセージに見られる巾着(テープ止め)形体など、長年親しまれてきたスタイルについては、売上への影響が大きいと見られてきた。事実、そうした面は否めなかったとは思う。
 だが、それが「必要か」と言われれば、必ずしもそうではなかったはずである。テープやクロージャーだけでなく、その分余裕のある包装材が必要であったわけである。「当然」といえば当然だが、生活者がそこに気づき始めたことが大きい。つまり"心"の変化の様がプロダクトおよびパッケージに投影されてきたということだ。
 ただし本誌では、単にこうした現象のみ捉えて「包装の真価」を問おうと思うものではない。たとえば、先のクロージャーについていえば「本当に必要がないのか」と問うてみるべきである。逆説的に言えば「クロージャーの強みとは何か」という問い掛けである。もちろん、クロージャーだけに止まるものではなく、それは全てのパッケージで言えることである。
 「包装の真価」について問い直し、再検証できるのはパスコなどの需要サイドではなく、パッケージの供給サイドだけであること忘れてはならない。なぜなら、それがプロダクトマーケットで寄って立つパッケージの基盤であり、存在する理由だからである。"栄枯盛衰"は世の常ではあるが、それはけっして悲観すべきことではないと思う。1つの変化をどう捉えて挑むかということだ。
 古の賢人が「衰微を見て、心情の哀惜を起さざらんや」との言葉を遺すが、本誌もまったく同じ思いである。このまま流れに呑まれて、衰微を受け入れていくのか。それとも、「にもかかわらず」と言い切れる信念を持ち、現実に挑んでいくのか。本誌とて同じ岐路にいることを自覚している。ゆえに、心ある人たちと手を携え、この時を千載一遇のチャンスとして「包装の真価」を留めたいと思うのである。